これは、昨日書いた浅草に向かう電車でのお話である。
ホテル最寄りの駅から、上野に向かっていた。
上野で銀座線に乗り換えるためだ。
あるイベントに間に合うようには、浅草に何分くらいいられるか、
時計とスマホの乗り換え案内を交互に見ていたときだった。
「ありがとう!」
と言う声が、わたしの座っている席の左の方から聞こえてきたので、
そちらを振り向くと、70代くらいのおじいさんらしき人が、笑顔で右手を前に差し出すようにしていた。左手でつり革に掴まりながら。
差し出した先には、小学5,6年くらいの男の子が立っていて、少しキョロキョロしていた。
そして、その近くに立っていた男性と目が合うと、頷くようにして、目の前の席に座った。
その様子からして、以下のような流れだったんだろうなと思ったのである。
僕ちゃんは、目の前の席が空いたので、すぐ近くに立っていたご老人に声を掛けた。
「ここ、空きましたよ。座ってください。」みたいに。
すると、そのご老人は、おそらく、
手を振ってお断りをしたか、小さな声で、「いやいや、大丈夫ですよ。」とか言われた。
でも、せっかくの好意を無にするわけにはいかないと思って、続いて、大きな声で、
「ありがとう。」と伝えた。
そして、わたしは大丈夫だから、あなたが座りなさいと言う意味で、右手で席の方に案内した。
僕ちゃんは、俺が座ってもいいのかな、他に困ってそうな人はいないかなと、周りを見渡した。
すると、父親と目が合って、軽く合図をされた。
で、お父さんも良いよって言ってくれてるから、目の前だし、座ることにするか。
そんな感じだったのではなかろうかと・・・。
それで。
その後の彼らの様子を見ていても、なんか微笑ましく感じられて、ずっとわたしは笑顔でいられたのである。
僕ちゃんはと言うと、ほんとに俺、座ってていいのかなと後ろめたさで、落ち着かない様子であちこち見渡していた。
その目の前に、先ほどの父親らしき人と、中学生っぽい男の子が集まって、僕ちゃんの様子を見てにこにこしていた。
みんなリュックを抱えていたので、親子3人でどこかに遊びに行く途中だったんだろう。
そして、肝心のご老人はと言うと、
電車のドアの前に立ったままだったけど、いつの間にか、両手でつり革に掴まっていて、身体を必死に安定するように頑張っておられた。
なんとも、微笑ましい光景ではないか。
良く聞く話だけど、
席を譲られたお年寄りが、その事でご機嫌斜めになって、せっかくの好意を無視した
とか、
酷いときには、「わしは、そんな歳じゃないわ!!」と逆上したり・・・。
でも、このご老人は、ずっと笑顔で対応しておられたのだ。
好意に対して、ちゃんと大きな声でお礼を言い、その相手に気遣いをしてあげていると言う・・・
わたしも見習わなくてはいけないな。
そうだ、もしかしたら、あのご老人、
ほんとは座りたかったけど、、、
僕ちゃんが大きなリュックを抱えているのを見て、遠慮したのかも。
そんなことを考えながらニコニコしていたが、ハッと気づいて電光掲示板を見ると、
上野を通り過ぎて、次は東京と表示されていた。
無駄な時間を使ってしまったけど、、、
心は温かくなっていたので、まあ、それも良しと!!