わたしは、妻と二人で旅行に出かけていた。
行き先の名古屋駅の改札を出て、予約していたホテルに向かっていた。
通路を歩いていると、少し離れた場所を仲良く歩いている夫婦らしき人に目が行った。
あれ?何処かで見かけたような・・・と思って、そのまま歩いていると、急に思い出した。
かつて同じ職場で同僚だった人とその奥さんではないか!!
妻は面識がないので、先に行くように伝えて、先ほどの夫婦を追いかけて行った。
楽しそうに話し合っている二人に追いついたわたしは、後ろから彼の肩をとんとんと軽くたたき、挨拶をした。
すると、この絵のように、再会を喜び合えるものと思いきや、なんと
「どちら様ですか?」
と言われてしまったのである。
もう10年以上経っているとは言え、あの頃とほとんど変わりない様子で、同僚に間違いないと確信をしている。
確かに、こんな遠くの町で偶然に出会うと言うことは、ほんとに信じられないほどのことではあるが、、、
よく似た人とかではなく、声を聞いても、まったくの同一人物であることは明白である。
もう随分と顔を見ていないので、わたしのことを忘れてしまっているのかも知れないと思って、昔の話を振ってみた。
ところが、また同じように
「人違いではないですか?」
と少し戸惑ったような表情を見せながら言う。
隣の奥さんも、首を傾げている。
この奥さんも、二人が結婚する前からよく知っていて、何度も会話をしたこともある。
その奥さんも、わたしのことを思い出せないようだ。
わたしは、そうか、マスクを付けているから気がつかないんだと思って、
わたしだよ!!と言いながら、マスクを外してみせた。
ところが、やっぱり二人とも
「いやあ、よく分からないです。」
と一緒になって答えた。
これは、もう埒があかないと判断し、その場を去ったのである。
なんで分かってくれないんだろう・・・と思いながら、妻を追いかけているところで目が覚めた。
そして、その夢を見たことについて、
「わたしは、彼に嫌われているのかな・・・」と思いながら、もう一度夢の内容を思い起こしてみた。
そして、気がついたのだった!!
夢の中では、彼の顔や表情ははっきりと、彼そのものと認識していたわたしだったが、
奥さんの顔がどうもはっきりとしなかったのである。
えーと、奥さんて、こんな顔をされてたっけ・・・!?と夢の中でも思っていたのだ。
そして、やっと分かった。
彼には間違いないのであるが、奥さんは別の人で、おそらく、不倫関係にある人なのではないか!?
だから、奥さんとも既知の中であるわたしが、その怪しい関係を奥さんにばらしてしまうのではないかと危惧し、別人のフリをしたのだ。
奥さんに、万が一追求されたときのために、ここでしらを切って置かなければならないと判断したのであろう!!
それで、妙に納得した気分になって、この夢のことは忘れることにした。